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繋がらない…

その日、会社の知り合いがパソコンを直して欲しいと言い出した。

今の今まで会社で仕事の話をしていたはずなのに、
突如としてパソコンの話になった。

あまりの話のそれ具合に思わず愕然としたが、
せっかくなので話を聞いてみた。


その人曰く、家のパソコンがネットに繋がらなくなったらしい。

日頃から使っていたパソコンを姉が旅行に持って行ってしまい、
代わりに姉の知り合いから他のパソコンを借りたらしいが、
そのパソコンが家でネットに繋がらないというのだ。

もちろん、
「貸してくれた人に聞いてみるのがいいんじゃないの?」
と言ってほおっておく手もある。

しかし、その知り合いを家に呼んで
ネットの接続を確立してもらうのも大変だろう。
なんせ姉の知り合いで本人の知り合いではなさそうだ。
しかも、本人はどこからどう見てもパソコンの設定などは出来そうにない。
操作もできるのかあやしいくらいだ。
せっかく頼んできたのだし、適当に設定してあげることにした。


さて、この会社の知り合い
今までにもこの独り言に登場したことがある。

たまねぎドレッシングを生成した、例の人間(♀)である。

彼女の家におもむきパソコンの設定をして帰る。
いろんな意味で楽しそうだ…。


さて、パソコンの設定といっても
何の準備もしていかないとやはり不安である。

そのパソコンに関して彼女にちょっと詳しく聞いてみた。

「おねーちゃんがパソコンを持っていくまではネットに繋がってたの」
「借りてきたパソコンでネット出来ないの」
「ワイヤレスが繋がらないって話」
「あー、緑色の線ならあったよ」
「そういうの大学でやってて得意なんでしょ」


要するに、借りてきたパソコンを
ネットにつなげようと試みては見たが失敗したらしい。

今までは有線LANで繋いでいてそのケーブルもちゃんとあるらしい。
そして、借りてきたパソコンは無線LANが搭載されているようだ。

よく分かっていない人なりの説明で、
パソコンの状態は大体分かった。
致命的な理由でネットに接続できないわけではなさそうだ。

次の日彼女は夕方で仕事が終わるので、
そのときにお宅を訪問すれば直すことが出来るだろう。
こっちは休みの日だが仕方ない。

とりあえず、明日直しに行くことを伝え、
ネットに繋ぐためには有線LANのPCカードを刺すか、
無線LANのアクセスポイントが必要なことを軽く説明した。

説明されても、当然そんな物は持っていないだろう。

どうせPCも借り物の状況だ。
そういった物もこっちで貸すことにした。

そして、パソコンにPCスロットが付いているかを目で確認してもらうため、
21時ごろに電話を掛けるからパソコンを見てくれるよう彼女に頼んだ。

なにやらすごく嫌そうだったが、
21時すぎに彼女から電話をくれる事になった。





ちゃんと電話をくれるかものすごく心配で
20時55分くらいからドキドキしていたが、
21時ちょうどに電話をくれてPCを見てくれた。

何となくこの人は電話が苦手なんじゃないかと思った。


□ □ □


次の日
アクセスポイントと、有線LANカードと、
万が一のための無線LANカードを持ち、
ついでに彼女のお母様に貸すための
DVDソフトを大量に搭載して会社へ向かった。

会社で簡単な仕事をこなしつつ、
彼女の仕事が終わるのを待つ。
彼女の家がどこなのか大雑把な位置しか分からないので、
彼女が車で家に帰る際に乗せてもらうためだ。

でもなんだか人の仕事が終わるのを気にかけながら
コソコソと自分の仕事をするのにいたたまれなくなり、
ペットボトルの飲み物を飲みながら駐車場で待つことにした。

炎天下の中どのくらい待つことになるかと思ったが、
その後すぐ彼女が現れて車に乗せてもらえた。

この車はこんな内装だったっけ…?と思いながらも車は進み、
彼女の家の付近の駐車場で車から下りた。

ミミズがダイブしてくるという藪の下を通りながら
彼女の棲む家へと向かった。

彼女の家は某団地の3階だか4階に存在していた。
階段を何度か上ったが、なんだか上の空だったので階数は覚えていない。

以前、彼女は自分の家は汚いからとか狭いからと
言っていたことが何度かあったが、
実際に訪れてみるとこざっぱりとしていて、
ところ狭しときれいに物が詰まっている感じだった。

お宅には彼女のお母様が居るようだった。
もちろん初めて会う初対面の方だ。

とりあえず彼女が私をお母様に紹介してくれるようだ。

「(下の名前を呼び捨てで)○○が来たよ〜

彼女を放置してお母様と挨拶をしていると、こんなことを言う。

「こんなヤツに挨拶なんかしなくていいから!」

前から会社ではそんな人間だとは思っていたが、
家に帰ってもこんな人間だとは予想を超えていた。


問題のパソコンを見ると、
ビクター製のやたらと小さいパソコンで、
どうやらセントリーノなノートPCだった。

無線LANがついているのはいいとして、
有線LANのポートもちゃんと付いていた。

なんでこれでネットに繋がらなかったのかと思い、
彼女に話を聞いてみた。

うむ。
彼女はこのパソコンを一度も起動したことがないらしい。

パソコンを起動してLANケーブルをつないだだけで
ネットに繋がったらどうしよう…。
パソコンを起動させて様子を見てみよう。


何気にこのノートパソコン。
起動するのに時間がかかる…。

しょうがないのでもってきたDVDソフトを取り出す。
家にある映画のDVDを大量に持ってきたのだ。

彼女お母様が映画好きらしいので、
せっかくだからもって来たのだ。

とりあえず彼女に渡してみる。

「なにこれ〜、貸してくれるの?」

なにやら彼女は喜んでくれているようだ。

「DVD貸してくれたよ〜」

お母様にも見せに持って行ったぞ、
持って来た甲斐があったかなぁ。

「お母さんの趣味とは違うけどね」

初めて会う人の趣味が事前に分かるほど第六感は発達していない。


さて、パソコンも起動したしLANケーブルを繋いでみよう。

これでネットに繋がったらどうしよう。

うむ。実際に繋いでみただけではネットに繋がらなかった。

ケーブルを繋ぐだけでネットに繋がったら、
5分で終わる作業のために往復3時間近くかけてしまうところだった。
よかったよかった。

あれ…、
「ダイヤルアップ接続をしない」に変更したらネットに繋がった。

家に訪れて10分ほどでネット接続完了。
しかもそのうち半分はパソコンが起動するのにかかった時間だ…。

ネットに繋ぐことが目的で来てはいるが、
あっと言う間に終わって帰るのはあまりにも空しい。

よし、無線LANでの接続を試みることにしよう。
そのために来たのだ。うむ。


そんなころ、台所で何かしていたらしい彼女のお母様から声がかかった。
何か飲むものが必要ではないか気にかけてくれているらしい。

お気になさらずに〜とお決まりの返事をしていると
彼女がやってきて何かを言う。

「この子ここに来る前に
なんか買って飲んでたからいらないんじゃない?」
「そんなもの買うくらいならウチに来てから
…水でも飲めばいいのに


あまりの酷さに息を呑んだのは昔の話だ。
今は涙を呑んでいる。


そんな事を言いながらも何か冷たい飲み物を作ってくれるらしい。

彼女にはそんなやさしいところもあるんですよ」
↑と言えと台本に書いてありました。


無線LANで接続するために、
モデムにアクセスポイントを接続し、
PCの無線LANのスイッチを入れる。

でも、アクセスポイントは認識されているが
なぜかネットに繋がらない…。
アレやこれやしてもネットに繋がらない。

PCを再起動しても繋がらない。

あれ、有線で繋いでも繋がらなくなったぞ…。

どっか変なところの設定をいじったっけな…。
うーむ…。


彼女が冷たい飲み物を持ってきてくれた。

りんご酢をサイダーで割ったものらしい。
ビールとかが出てきそうでどうしようかと思っていたが
夏に合いそうなサッパリ系のドリンクが出てきた。

「夏はやっぱり りんご酢のサイダー割りですよね」

いやいや、なんか違う気がするのは気のせいではないはず…。
さっきまで”水でも与えとけばいいんじゃね?”って感じだったじゃないか。

サイダーがあるならサイダーだけ出せばいいじゃないか。

なんでわざわざ
氷を入れて
りんご酢を垂らして
サイダーを注いで
くるくるかき回して
姉が焼いたという世界に一個しかないカップで
りんご酢のサイダー割りを出すんだ…。

ぃゃぁぁぁぁ、ゃめてぇぇぇぇぇぇぇ。
なんだか意味が分からなくて飲みづらいぃぃぃぃぃぃ。


イロイロと設定を試した結果、
モデムの電源を入れ直したら有線で繋がるようになった。

どうやらLANが飛んでいたらしい。

無線の設定をしてからモデムを再起動すれば
無線でネットに繋がるかとも思ったが、
とりあえず繋がったことを彼女に報告。

案の定ネットに繋がれば何でも良いや的な感じなので、
有線LAN仕様で終了と言うことになった。

せっかくなので無線LANで快適ネット生活♪
と思った計画はお流れになり、
結局持ってきた物はDVDしか使わなかったが、
まあそれも良しだろう。

なにやら彼女はネットに繋がって嬉しそうだが、
お礼の言葉の中に所々ひどい言葉を交ぜてくる。

こっちはあまりありがたくない。


気を取り直し、
せっかくネットに繋がったのだから、
このサイトのことを彼女に教えてみる。

とりあえず猫写真を見せる。

「ビネコだね」

微猫かと思ったが美猫らしい。
聞いたことのない言葉だ…。

そして彼女が大活躍する「たまねぎドレッシング」を見せてみる。

実は何を書いていたか詳しくは覚えていなかったため、
見せながらも見せているこっちが恥ずかしくなった。

本人が見る予定のない独り言を本人に見せるのは自殺行為だと思った。

でも、なにやら笑ってくれていた。

「喋るより書いた方がいいんじゃない?
黙ってれば〜?」


きっと誉めているに違いない。


最後にパソコンの起動方法とポインティングデバイスの使い方を説明する。

「そういえばマウスないんだった。すごい使い難くない?」

モンスターAがマウスを貸してほしそうにこちらを見ています。
マウスを買しますか?
→はい
   いいえ

何でも貸してしまうのは良くないかと思ったが、
どうせ使っていないマウスがあるんだから仕方がない。
明日持ってこよう…。

と言うことで無事(?)パソコンの設定を終えて帰宅することに。

イロイロと手間をかけたおかげで2時間程かかってしまった。

2時間の間にリンゴ酢ソーダ1杯しか出なかったのがアレだったが、
帰る際にも建物の外までしか送ってくれなかった。

確かに駅までは近いが、
その駅から帰ると定期券外で電車賃がかかるのだ。
隣の駅くらいまで送ってくれる優しさが欲しい…。

まあ、後日お礼として「おいしいロールケーキ」をくれるという話もしていた。
でも、この炎天下の中1時間強かけて家に帰る人に
冷凍のロールケーキを渡されても困るので、
それはやめて欲しいと言っておいた。

そうしたらなんだかんだと小言を言われた。
きっとロールケーキの代わりに他のお礼があったりはしないだろう。


それにしても、
パソコンの設定をしに行ってこんなにひどい目にあったのは初めてだ。

悪気があるのか無いのか分からないが、何かが繋がらない。

もし次に何かあっても、もう彼女の家には行かないだろう…。
と思いつつも呼ばれたらノコノコ出かけていきそうな自分が怖い。

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