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先端恐怖症

久しぶりに健康診断を受けた。
仕事をする上で年に一回くらいは必要なんじゃないかと思うだろうが、
実はものすごく久しぶりに受けるのである。

健康診断は13時からである。
その5時間前から飲食は禁止とのことだ。

何で飲食禁止なのかと思っていたら、
採血で血糖値をはかるためのようだ。

採血されるのは、それこそ何年ぶりか分からない。
10年以内にしたかどうかすら定かではない。

ただ、仕事柄採血をするところを見ることは頻繁にある。

誰かの血を採血してみて良いと言われれば、
たぶん出来るだろうと思えるくらいの回数には立ち会っている。


駆血帯を巻いて、手を軽く握って貰って、静脈を探して、消毒を行って、
針を刺して、静脈に通して、手は楽にして貰って、血を抜いて、針を抜いて、
途端に血がぴゅーと出て、
あわてて駆血帯をはずして、謝りながら止血して、注射痕にパッチを貼る。
そんなドクターも居た。

患者が動いたせいで、腕を波縫いにした看護師も居た。

そんな採血だが、自分で受けるのは何となく楽しみだ。


健康診断は何項目かある。
集団で受けたので、流れ作業だが待ち時間が長い。

隣に並んでいた20台前半くらいの男性と雑談をしながら待った。

彼はアルコールに触れると、びっくりするくらい真っ赤になるらしい。

彼は高校の時に行ったアルコールパッチテストで、
パッチをはがす係りの人に
「写真を撮らせて」
と言われるくらい反応が出たらしい。
そんな彼はマスキン水あたりで消毒が行われることだろう。

さらに、彼は「細くてとがった物が苦手なんですよ」と言う。
細くてとがったものを腕に刺される、注射はとても嫌いらしい。

確かに、先端恐怖症という物は存在する。
怖い人にはとにかく怖いのだろう。
無事に採血を行えるかどうかは、
私が発する次の一言にかかっているのかも知れない。

ここは一つ、気の聞いた言葉を発し、彼の心を癒す必要がある。
そういうことならば任せてください。


「大丈夫ですよ、採血用の針は注射針の中では太い方ですから」

「いや、そういう問題じゃないでしょう(笑)」


そういう問題ではないらしい。

そんな彼は先に採血室に吸い込まれていった。

次は自分の番だ。


長さ7センチくらいの小さな採血用の管が4本ある。
採血の量は100cc以下だろう。

久しぶりの採血で針がプスプスと体を貫くも、さほど痛くはなかった。
精神的な慣れは重要だ。

ぴゅるりらーと採血用の管に血が吸い込まれていく。
「大丈夫そうですか〜」と尋ねながら次々と管を交換する看護師さん。
管を取り替えるときに針が動いて少し痛い。

最後に取り替えたときはちょっと痛かった。
血管を完全に貫通したんじゃないかと思った。

「いたた…」
「ああ、ごめんなさい(焦)」

血を吸い取れなくなったことで深く刺したことに気がついたらしく
針の位置を変えてくれた。

採血の上手下手は、経験もあるだろうが才能による部分も大きい。
今度はもう少し上手な人に採血をお願いしたい。


採血は無事に終了した。
看護師さん曰く、5分押さえていてくれとのことだ。

この後近くのいすに腰掛けて5分待つのだが、
先に採血を受け椅子に座っていた方は気分が悪くなったようだ。
一種の貧血なのだろうか。

確かに、そう言われてみて気がついたが、体調にわずかな変化がある。
体全体に冷涼勘が漂い、心持ちすがすがしいのである。

「何か体が軽くなりました」
意外と血の気が多いのかも知れない。


もしかすると、たまに体から血を抜くとさっぱりしていいのかも知れない。
今度機会があったら献血をしてみたいと思う。

■ 2009年10月18日 ■

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