3時のおやつを作らなければならない。
タイムリミットまであと40分。
それまでにフルーツ入りの寒天を作ることができるだろうか。
と言うことで、
職場で出すためのおやつの寒天を作ることになりました。
本来は前日なり朝なりに作って置けばよかったのですが、
情報不足で誰も作っていなかったのです。
それに気がついた某女性職員とともに、寒天を作ることになりました。
材料は全部そろっています。足りないのは時間だけです。
制限時間までに無事寒天を作り、おやつに出すことができるでしょうか。
「寒天の粉はあるんだけど〜、何グラム必要なんだろう〜」
必要な分量を書いた表がここにある。
1人分は0.6グラムと書いてある。
12分作ればいいようだ。
0.6×12=7.2
「7グラムちょいですね」
「どのくらいだろう〜」
彼女は1kgまで量れるバネばかりで7gを量ろうとしている。
1目盛20gだ。
寒天パウダーは量れなかったが、
彼女のおやつ作成能力を測るには十分であった。
この人は料理に向いていない。
とりあえず無視して水の分量を量る事にする。
12人で800mlくらいだ。さっさと火にかけよう。
火にかけている間にデジタルばかりを持ってきて寒天を量る。
1g単位でしか量れないがしょうがない。
フルーツは缶詰に入っている。
びわとぶどうとパイナップルの缶詰だ。
シロップはいらないので缶に穴を開けて水分を切ろう。
砂糖は12人で120gか。彼女量ってもらおう。
「入れ物が84グラムだから…」
「いやいや、0にあわせるボタンがあるんですよ」
「ほんとだー」
さっさと缶詰の水を切り、自分で砂糖を量ったほうが早い気もする。
お湯が沸いてきた。
寒天をさっさと溶かそう。砂糖は後から入れたほうがいいのかな?
「ダマになったけど茶漉しでこせばいいや」
確かに水で溶いてから入れないといけないんだったような気もする。
まあ、漉せば同じことだろう。
彼女にはフルーツをきってもらうことにしよう。
「缶の中身全部じゃなくて書いてある分量を使うんですよ」
「どのくらいかなぁ」
「1人分の分量を12倍すればいいんですよ」
「このくらいかな」
「そんなもんでしょう」
たぶん大丈夫だろう…。
それはそうとして砂糖も溶かさないといけない。
まぜまぜ…。
砂糖も溶けたし、寒天はまだダマがあるけどそろそろ型に流すことにする。
個別に分けている暇は無いから金属のバットに入れよう。
茶漉しで漉して…。
水と氷を入れた一回り大きなバットに入れて冷やすことにしよう。
彼女はフルーツを刻んでいる。
「大きさはこれくらいでいいかな〜」
寒天に入れるんだから細かいくらいでちょうどいいだろう。
バットに入れた寒天もだいぶさめてきたし、
ここらでフルーツを流し込もう。
「どばぁ」
混ぜないといけないから…、ぐーるぐる。ぐーるぐる。
おお、冷たいフルーツを入れたおかげで寒天が固まり始めている。
これ以上混ぜるとスクランブルエッグになってしまいそうだ。
冷蔵庫で冷やそう。
「えー、もう固まりだしたの〜?」
あまったフルーツは彼女がタッパーに入れてくれた。
タッパーに入れた後、誰が何に使うのかは知らない。
あとは固まるまでの間に使った食器類を洗っておこう。
「片付けるのは得意だから〜、まかせて」
このお方、3年間料理教室に通っていたことがあるらしい。
そこで、片付けるのをメインにやっていたらしい。
「料理教室ってそれなりにお金がかかるんじゃないですか?」
「そうなのよ〜、教科書とか教材が高いのよぉ」
ついでに昼食時に洗っていなかった炊飯器も洗おう。
と言うか彼女には炊飯器の内釜を洗ってもらおう。
「内蓋は洗ってくれない人が多いんですよね…」
「ほんとに〜?私は毎回洗ってるわよぉ」
「ふた全体も取り外して洗えるんですよね」
「そうなんだ〜、それはしらなかったぁ」
寒天は固まったようだ。
ただ、まだ温いのでもう少し冷たくなるのをまとう。
「…内釜になんかついてる」
いま彼女が洗ったはずの内釜の内側に、
何かヌメヌメするものが付いている。
「ほんとに?」
「本当だ〜、ご飯粒が伸びた奴だぁ。なに、細かくな〜い?」
「だってヌメヌメだし」
寒天はまだ少し温いが、もう時間だ。
切り分けてさらに盛ることにしよう。
水をかけてバットから寒天をはがして…、
一回り大きいバットをかぶせて裏返して…。
振る。
ふりふり、でろ〜ん。
よし、きれいに型から外れた。
後は切り分けるだけだ。
12人分だから…、まあ3×4かな。
こういうものは寒天だけじゃなくて中の果物を切らないといかん。
果物の部分でぐちゃぐちゃになってしまうのだ。
はい、完成。
ん〜、手でつかんでさらに盛ることができるな。
だいぶ硬い気もするけど問題ないだろう。
寒天だし噛み切れないことは無いはずだ。
「おやつはこれでいいとして、飲み物は任せました」
お茶にしたらしい。
ただ、急須はあるが、それに合った茶漉しが見つからない。
「とりあえずこれを使いましょう」
寒天のだまを漉したときに使った、もち手つきの茶漉しを使うことにした。
彼女はそれにお茶の葉を入れて急須の上に置き、
そこにお湯を注いでいる。
「中国茶だとはじめの一回目は捨てるんだけどね〜」
そんなことはどうでもいいが、
沸騰したお湯をそのまま使って日本茶を入れたらあかんよぉ。
しかもお茶の葉がお湯に浸かっていないぞ…。
…。まあいいか。
お茶も入れているし使ったものを洗っておこう。
「片付けるのは得意だからぁ、まかせて〜」
とりあえず、おやつの時間には間に合った。
彼女1人では、いろんな意味で無理だっただろう。
気分転換にもなったし、めでたしめでたしだ。
そんな彼女は、履歴書の長所の欄に「ていねい」と書いて寄越した
運動が好きそうな60代の女性です。
■ 2008年4月27日 ■