作者の独り言 > 
最近ドキドキしたこと。

近いうちに、ある人に話をしなければいけないことがある。
聞きたいことと、伝えたいことがあるのだ。

仕事の話であるが、仕事中の時間は避けたい。
プライベートな時間を利用し
会社以外の場所で話をしたい。

会社の他の職員には聞かれたくない話であり、
簡単に終わらせたい話ではない。
聞かれる危険性を考えると仕事中には出来ないのだ。

そんな重要な話をしなければならない為、
その相手を話に誘わなければならない。

しかし、それには大きな問題がある。
「人を誘うのは苦手なの」
私は人を誘うのが苦手なのである。

人と話をするのは嫌いではないが、
人を誘うことが非常に苦手なのだ。


苦手とはいっても誘わなければいけないし、
誘う理由は明確に決まっている。
ただ、その具体的な内容を述べて誘うわけには行かない。
ほかの職員に漏れたら困る話であるのだ。
誘うときにそのことがもれたら困るのだ。

仕事の話とは言っても相手のプライベートな時間を使うため、
日時も相手に会わせる必要があるだろう。

「詳しく言えないけど、話したいことがあるから
そのうち時間を作ってくれませんか?」


おそろしくアバウトな話だ。
そんなことを伝えるだけで
あの人はそんな機会を作ってくれるだろうか。

なんせ、その話をしなければならない人は
たまねぎドレッシング等で活躍した某30代の女性だ。
素直に時間を作ってくれるとは思えない。

「やだぁ、メンドい」

そういわれる可能性も十分にある。
そんな彼女をうまいこと誘い出さなければならない。
いろいろな意味でとても苦手だ。

どちらにしても、
彼女を誘うための話をするには
彼女が独りで居るところで話を持ちかけなければならない。

それでいて他の職員に話が聞こえたりする事が
ないようにしなければならない。
このお方、声が大きいのでそこらでは簡単に話せないのだ。

あまり人が来なくて話をしやすい場所、
休憩する時に彼女が居る場所が良さそうだ。
1時間近くそこにいるし、
タイミングも謀りやすいだろう。
苦手なことはさくっと終わらせよう。


と思いつつも早一週間。
意外と出入りが多かったり、
他の人と休憩したり、
こちらの時間がなかったり、
色々な事情で話しかけるタイミングを逃し続けた。

「だって、苦手なんだもん、特に急ぐ内容じゃないしぃ」

しかし、無駄な一週間では無かった。
この一週間で彼女の習性(休憩時)をだいぶ観察することが出来た。

・月曜日は人の出入りが多い。
・火曜日は休み。
・水曜日は他の人と休憩する。
・木曜日は洗濯物を干しに来る人が居る。
・金曜日は休み。
・土日は知らない。

本人を観察し着々と情報を収集したおかげで
彼女の休憩中にその周りで何が起こるかの予測が大体付いた。
しかし、このままでは話をしたいという話をするために
ストーカーになってしまいそうだ。
情報収集もほどほどにして話をつけないと。

人が来るかどうかは天に任せて適当なタイミングで話しにいこう。


そんなとある木曜日、
ふとしたことからターゲットが1人になるいいタイミングが出来た。
日々の観察のおかげだ。

その日は仕事の流れがいつもと少し違い、彼女が早めに休憩に行ったため
洗濯物を干しに来る人が現れるまで時間的な余裕ができたのだ。

「休憩に行って20分くらいは食事をしているから、
25分くらい経ったら行ってみよう」


計画的なのか突発的なのかよく分からないがまあ良いだろう。

さて、問題はなんと言って誘うかだ。
ある程度相手の出方を想定しておかないと対応に困ってしまうぞ。
なんせすごく苦手なのだから、
アドリブは多少弱くなってしまうかもしれない。

1.誘う→「え〜、やだぁ(全否定)」→説得
2.誘う→「はぁ〜、なんで?(軽い否定)」→説得
3.誘う→「どんな話し…?(必要ならば仕方なく)」→説明
4.誘う→「いいよ(積極的)」→想定外

どちらにしても説明と説得が必要だろう。
簡単に伝えただけでは了解しないだろう。
困ったものだ。

まあ、そんな事を考えているうちに彼女も食事を終えただろう。
行ってみるか…。


休憩所は4階の倉庫の隣だ、
倉庫に持っていく物を持っていこう。

…。
話しかける前にクッションを置いておかないと耐えられないのよ。

荷物を持って階段を一歩ずつ昇る。
なんだかとっても緊張してきた。
心臓がどきどきいってる。
かなり危険だ…。ドキドキ。

彼女は予定通り休憩している。
まだ食事中のようだ。
今日はナポリタン風味のスパゲティらしい。
どこと無く不味そうだがもさもさと食べている。

とりあえず彼女の前を通り過ぎて倉庫に入ろう。
持ってきた荷物を倉庫に入れて…、
どうしよう。
話しかける出だしは何がいいんだ。
今しゃべったら相手に緊張がもろに伝わる気がする。

心臓がさらにドキドキしてきた。
心不全で死ぬかもしれない。
持ってきた荷物は倉庫に収まってしまった。

意を決して倉庫を出て本人を見てみた。
スパゲティを食べながらカタログを見ている。
いつぞやも見ていたカーテンのカタログだ。

「まだカーテンを選んでたんですか」
「ん〜、なかなか決まらないの」

思わずカタログに食いついてみたが、
相手はスパゲティーに食いついたままだ。
しかも、話かけたは良いがすでに話がそれている。

修正するいいアイデアも思いつかないので
さっさと言うべきことを伝えてしまおう。

「○○さん、今度話をしたいことがあるんですけど、
仕事中じゃない時に時間とれませんか」

よっぽど鈍感じゃない限り相手に緊張が伝わる気がする。
われながら恐ろしいほどに緊張している。

「…」
「いいけど…、何の…話?」


いいらしい。
何の話か聞きたいようだが、
とりあえず話をしてもいいかなと思っているらしい。
よっぽど重要な話をするということが無駄に伝わったのかもしれない。

このお方、ちょっと前までは
「反抗期な女子高生」のような感じだったが、
最近はだいぶ素直になってきた印象がある。
実際この反応はだいぶ素直な気がする。
ただ、話の内容がが悪いことか良いことか分からない感じが
声に出ている気もする。

「仕事の関係の話で…、詳しくはいえないけど
聞いておきたいことと、話しておきたいことがあるんですよ」
「注意とかそういう悪い話じゃないですよ」


「ああ、そうなの…。

注意とかなんでそんなに偉そうなの?」


納得しかけた気がするのに
突然「反抗期な女子高生」が再発した。
良く分からないが何かが引き金を引いたらしい。

でもまあ「いいけど…」と言った以上話をする機会は作ってくれるだろう。

その後、ここでは詳しくいえない話だということと、
ほかの人に聞かれたら困る話だということを伝えて話を終えた。

ちょうど下から洗濯物を干す人もあがってきたようだ。
なかなかちょうどいいタイミングだった。
地道な調査の甲斐があった。


話をし終えてから気がついたが、
心臓のドキドキは話しているうちに解消されたらしい。
やはり話しかけるときが問題の様だ。
誘うのも苦手だが、要するに話を持ちかけるのが苦手らしい。

今度本題の話をするときには
心不全で死なないように注意しないといけない。
死んじゃったら話どころではない。


それにしても、
立っている状態で心臓の音がドキドキ聞こえたのは久しぶりだ。
血圧計で測ったらどんな値が出ただろうか。


冷静に見えるらしいけどそんな日もあるんですよという話。

■ 2008年1月27日 ■

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