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六本木カレー同窓会

「幹事をお願いします」
「ほ…?」

今回の同窓会は幹事として参加することになった。
幹事なんて…、ちゃんと勤まるかしら。



例の同窓会が開催されることになったのは、
春の日差しが暖かくなったある日のことだ。

今回は、六本木までみんなで行って
美術館を観てカレーを食べる。

もちろん、六本木のカレー屋さんとはこのお店である。

個人的に、あそこのカレーをまた食べてみたいので、
同窓会の行き先に提案したのだ。
今まで3回ほど訪れたのだが、
未だすべてのカレーを堪能していないのである。

みんなで違う種類のカレーを注文し、全カレー喫食を目指すのだ。
という目論見だ。

そのときにはまだ、同窓会の幹事などと言う大役を任される事になろうとは、
想像もしていなかったのである。



幹事のお姉さまと連絡を取りながら日程の調整をし、
六本木に行く日も近づいてきたある日。
幹事のお姉さまから連絡が来た。
「仕事が入ったので行けなくなりました」
会社であんな事やこんな事をしなければならなくなったらしい。

「幹事をお願いします」
「ぉぅぃぇ」

これが幹事をすることになったいきさつである。

参加メンバーは全員で5名。
無事にこなすことが出来るだろうか。



六本木へは電車で行く。

メンバーの皆様とは、時間を決めて電車の先頭車両で落ち合う予定だ。
なかなか予定通りに物は進まないだろうと思いつつも、
電車に乗り込んだ。

時間通りの電車の先頭車両に陣取り、
メンバー合流地点(駅)に到着するも、
予定通り落ち合えたメンバーは2人だけ。

最愛なる愛妻と、寸劇のお姉さまだ。

もう1人、同じ列車に乗っているメンバーもいるようだが、
先頭車両は衝突したときに怖いからと言う理由で後ろの車両にいる。

いつもそこはかとなく遅れて現れるお姉さまは、
出がけに親戚が来たとかで遅れるという連絡があった。

今のところ、計画に対する遅れは13パーセント程度だ。


今回の計画では…、
電車内で落ち合い、六本木のサントリー美術館で薩摩切り子を眺め、
インドなカレーを食し、六本木ミッドタウンを放浪する予定である。

だが、遅れている1人を残して美術館に入るのも問題なので、
まずミッドタウンをさまようことにした。
全員集まるのが11時半頃になる様子なので、
メンバーが集まった後はカレーである。
食事後に美術館へ行き、その後どうするかはそのとき考えることにする。


ミッドタウン内は、うろついているだけでも以外と楽しい。
いろいろとおもしろい物が売られているのだ。

ナチュラルチーズの固まりだの、100年物のバルサミコ酢だの、
何十万円もする箸だの、服だの宝石だの、
誰が買うんだか分からない小物から日用品まで、様々な物がある。

軽食やデザートを売る店も多く、
気を抜いたらカレーを食べるまでにお腹がいっぱいになってしまいそうである。


そうこうしているうちに、
遅れていたお姉さまから六本木に着いたとの連絡が入った。
合流して、カレーを食しに行かなければならない。


カレー屋さんは、怪しいビルの中に存在している。
遠くから見てもそれとは分からないようなビルだ。

「この辺なんだけどどこだったかしら」

近くまで来ていてもいまいちどのビルだったか分からないのが難点だ。

狭いエレベーターを上り店にたどり着くと、
相変わらず場違いな感じのドアがお出迎えする。

今回は予約を入れてあるのだが、
入り口に来ただけで予約客と分かったらしく、
スーツのインド人店員さんに中へ連れ込まれた。

店内は、初めに来たときよりも何となく親しみやすい雰囲気になっている。
テーブルクロスも毎回買えるのではなく、
透明なアクリル版を載せることで汚れを防ぐ使用に変えたらしい。


問題は何を食べるかであるが…、
タンドリーチキンと、カレー5種とナン4種とマサラティーを頼んだ。

店員さんが、頑なにマサラティーは食後にするべきと言うので食後にした。


5種のカレーはそれぞれ違った味で楽しめた。

ほうれん草とチキンのカレー、ほうれん草とチキンのスパイシーなカレー、
豆を使ったカレー、魚を使ったカレー、スパイスの利いたカレー。

4種類のナンもボリュームがありすぎて大変だ。

何となく食べ過ぎた気もするが、
それほど胃にもたれるものでもないので大丈夫そうだ。

なんせ、次は美術館に行かなければならないのだ。


美術館の展示物は薩摩切り子である。
ガラスの瓶やら皿に切り込み模様を入れたような奴だ。
予備知識があるわけではないのでよく分からない。

無色や赤、青の切り子は見たことがあったが、緑の切り子は初めて見た。
そういえば江戸切子なんて言うのもあったなぁと思いながらも、
どんな物高はあまりイメージが湧かないのが悲しいところだ。

全体的に、何となくきれいなのだが、
アンティークでありながら、
これと言った風格を感じられないのはナンだろう。

中には逸品だと感じる物もあるのだが…。

洗練された幾何学模様の中に、
製造段階における歪さが見られるからだろうか。
なんだかどれもこれも中途半端な出来に見える。


美術館でのらりくらりと鑑賞していたら、
他の皆様をだいぶ待たせてしまったようだ。

この後はミッドタウンをまたうろつこうかと思っていたが、
なにやらみんな帰宅予定らしい。
事前に、15時頃にいったん解散して後は自由行動という
プログラムを伝えておいたせいだろうか。

いろんな理由で帰りたい人を帰りやすくする為に
そういうことにしたのだが、
全員帰るのは想定外だ…。

皆様お忙しいところを無理に来たのだろうか。
幹事が悪い感じだったのかしら

まあ、そのまま普通に帰りましたとさ。

■ 2009年7月9日 ■

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