ちょっと昔の話ですがうちには謎の物体がありました。
高さが40センチほどで、
鉄砲の弾を大きくしたような形で、
重さは5キロぐらいで、
頭にはカチカチ回せる蓋のような物が付いていました。
実際、子供の頃はよく回して遊びました。
この謎の物体は、
うちの父が20年くらい前にどっかからもらってきた
「爆弾の殻」
だということになっていました。
とりあえず邪魔なだけだったので、いつもはベランダの隅に
立てて置いてありました。
もちろん雨ざらしです。
この「爆弾の殻」が大活躍したのはうちの兄の学校の文化祭の時でした。
文化祭は戦争にまつわる話や物を展示していました。
うちの母は、この「爆弾の殻」を展示しようとして、車で運びました。
道中の車内では、
大きめのダンボール箱に入れられた「爆弾の殻」が車の動きに合わせ
→あっちにゴロゴロ→
←こっちにゴロゴロ←
と転がっていたそうです。
無事学校に着き、先生に見せたところ、
突然先生の顔が硬直し、こう言ったそうです。
「これは信管が付いています、警察に引き取ってもらった方がいいです」先生から爆弾発言が飛び出しました。
そこで母は、近くの神奈川県警のカウンターに
「信管付き爆弾の殻」を運びました。
もちろん、大きめのダンボールに入れて車で運んだそうです。
「あのー、すいません。
これ、本物の爆弾らしいんですけど、引き取ってもらえませんか?」
警察官は、見たとたんにすぐ納得し、事情聴取を取ることになりました。
「信管付き爆弾の殻」は新米らしい警察官が毛布でくるんで抱きかかえ、
聴取を取るために五階の事務室に向かったそうです。
上役らしい警察官と三人でエレベーターの前まで行くと
そこではほかの警察官数名が、エレベーターを待っていました。
エレベーターが来るまでの間に、
上役の人と「新米警官の持っている物」についての会話をした彼らは
「ふーん」と無関心な返事をして
エレベーターには乗らずどこかへ消えていきました。
事務室に着くと、十数人の警察官がいたそうです。
母は席に座らされ、丁寧にお茶が出されました。
茶碗は、何故かお茶を飲み終わるとすぐにさっと回収されました。鑑識に廻され、アルミの粉をふられる様子が目に浮かびます。
事情聴取では「信管付き爆弾の殻」の入手方法やその他の経緯、
住所氏名その他を聞かれたそうです。
事情聴取も終盤に掛かり、ふと気が付くと、
質問している警察官とうちの母以外は
事務室から消えていました。
とりあえず、「信管付き爆弾の殻」は押収というかたちで回収され
事情聴取にあたった警察官は、
「これは自衛隊に処理して貰います。いやー本当にご苦労さまでした」
と言い、丁寧に出口まで見送ってくれたそうです。
明くる日に警察から無事に処理が終わったとの連絡があり、
「爆弾は信管が付いており生きていました。
ベランダに立てて置いてあったとのことですが、
もし地震等で倒れ爆発したら
1キロ四方は吹っ飛んでいた
でしょう。奥さんは運が良かった」
と言われたそうです。
もし本当に爆発していたら、
ビンラディンもびっくりの自爆テロとなっていたでしょう。
テロリ
テロラー
テロリスト。