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美術館に行ってきました

ふと、美術館に行きたくなった。

美術館に行くことは滅多に無いのだが、
ふとしたことである展覧会の開催を知り、見に行ってみたくなった。

アーティストの名は
アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック
19世紀のフランスの画家である。

数年前にある小説を読んで以来
このアーティストの作品、実物を見てみたいと思っていたのだ。
美術館からだいぶ足が遠のいていたが、
久しぶりに美術館に行きたくなった。

場所は六本木のサントリー美術館。
平成20年の1月26日から3月9日までの開催だ。


インターネットで前売り券も売られている。
前売り券を2枚購入した。

1人で行くのもなんであるし、
いつも何かとお世話になっている人を誘ってみることにしたのだ。

何度か独り言に登場している
同じ職場の30代の女性職員だ。
この方は、比較的良く美術館に行くようだ。
いろいろと忙しいだろうが、誘えば都合をつけてくれるだろう。

問題はどうやって誘うかだ。

数年前に読んだある小説に前売り券を挟み、彼女渡してみた。

「なんですか?これは」
「しおりです」
「チケットじゃないの?」
「使えないからしおりにしたんです」
「ほら、1月26日からなんですよ…」

「…」

どうやら意図が通じたらしく、
都合をつけてくれることになった。

人を誘うのはやはり苦手だが、
この方の場合は心不全になるほどではない。


そんなこんなで、3週間近く前に予定を立てて行動することになった。
美術館に行くのは2月3日だ。


そうしているうちにやって来た2月3日。
朝起きたら雪が降っていた。
いや、雪が積もっていた。

三浦市で雪が積もるなんて、異常気象と言っても過言ではない。
負の力が美術館へ行かせまいとしているような気もする。

相手は雪国育ちのため雪は気にならないらしい。
バイクで転倒しないように…などとのたまっている。

どうせ最寄り駅まで出てしまえば、
後は屋根のあるところを移動すれば良いだけだ。
地下鉄は雪の影響をほぼ受けないし、
京浜急行も雪にはそれなりに強い。

美術館行きを決行することにした。


待ち合わせ場所は最寄り駅から30分ほど上った駅のホームだ。
そこで時間通りの快特に乗れば
開館時間の10時には美術館に付く予定だ。
事前に時間があったため、それなりに計画を立てたのだ。


深深と降り続く雪、何度もオーバーランする電車。
待ち合わせ駅に付いたとき、電車はすでに7分遅れていた。
やはり負の力が働いているらしい。

駅のホームでなにやら困っているらしい彼女を発見。
ダイヤが乱れていることに気がつかず、
いま来た電車に乗るべきか悩んだらしい。

コンコンと降り続ける雪、風通しの良いコート。
立ち止まっていては死んでしまう。
それを尻目に雪国育ちは元気そうだ。

凍死する前に無事に到着した快特に乗車し六本木へと向かう。

途中で大江戸線に乗り換え、
ビッグサンダーマウンテンのようにうねる線路を
先頭車両から望みながら進む。

電車の中は暖かくてよろしい。


結局サントリー美術館には予定より30分近く遅れて着いた。
なんだかんだ言って雪の影響は大きい。


サントリー美術館は六本木ミッドナイトタウンの一角にある。
美術館自体に久しぶりに来た為よく分からないが、
シンプルでいてそれなりに凝った作りをしている。
美術館の内装自体にもある種の美術的価値があるらしい。


いままでロートレックの絵は何枚か映像で見たことがある。
ムーラン・ルージュのポスターや油絵の類だ。

この展示会でそれらの現物を見たが、
ロートレックの絵はどこか気になる部分が多い。

登場する女性はみな醜悪に描かれている。
被写体が醜悪なわけではないようだ。

ロートレックが彼女たちを醜悪に描いた理由は何なのか。
奇形に育ったロートレックは何を思って描いたのか。
とても興味深い。

ロートレック展。
実際に見なければ分からない、その距離感。
3月9日まで開催しています。


美術館を出たのは12時過ぎだ。
降雪のためか日曜日にもかかわらず入場者が少なく、
とても鑑賞しやすかった。

わざわざ予定を組んで来ただけのことはあった。
また機会があれば美術館に来たい。

それはそうと12時過ぎだ。
お昼ご飯の時間だ。
何を食べようか。

いつもならば行き当たりばったりで店を選んでいるが、
実は今回は違う。

わざわざ誘い出した手前もあるし、
六本木の飲食店を調べて来てあるのだ。

「カレーとイタリアンどちらがいいですか?」

微妙な選択肢だとは思うが、
この付近は日曜日に休む店が多いのだ。
日曜日のお昼に開いている店で
よさそうな店があまり見つからなかった。

「カレーかな」
カレーがいいらしい。

目的のカレー屋さんは駅の近くにある。
せっかく準備した地図を家に大切においてきたため、
どこにお店があるのかよく分からない。
そんな時は携帯で探しながら進めばよい。

六本木駅の近くにあるそのカレー屋さん。
簡単に調べたところカレー専門店のようだ。
店員にインドの方が多数居られるらしい。

あるビルの4階にそのカレー屋さんは存在していた。
エレベータを上ってすぐにあった。
そのフロアにはそのお店しかないようだ。


でも、店の外観がおかしい。
何かおかしい。本能が危険を予告している。

彼女がドアを開けてさっさと中に入っていく。
強いのか鈍感なのか分からない。

外観から感じた危機感は、内装を見て現実となった。

レストラン内装
「キャー」

カレー専門店などという生易しいものではなかった。
どこからどう見てもインド料理専門のレストランだった。

ちょっとお昼ご飯にカレーを食べにきましたという感じではない。

どう考えてもおかしい。
テーブル基本セット?
何がおかしいって、
テーブルクロスに染みひとつ無い。
皿の上に分厚い布のエプロンが乗っている。

壁にはインドらしい絵が飾られている。

ちょっとしたカレー専門店に来る予定だったのに、
想像とはあまりにも違う店に来てしまった。

インド料理のマナーなどさっぱり分からないぞ。
誰がこんな店を選んだんだ。
「ごめんなさい、自分で選びました」

とりあえずメニューは日本語で書いてある。
でも店員さんはカタコトの日本語と英語のミックスだ。

まあ、六本木で日本語まったく通じない店もありえないだろう。
食事に来ていることは分かるだろうし、
アドリブで何とかこなせるはずだ。
人類みな兄弟さ。

メニューを眺めるが、思いのほかカレーの種類が多い。
日本のような煮込んで何ぼのカレーではないからだろう。

とりあえずマサラティーとカレー2種を頼むことにした。

「チャイは〜、サ〜キ?ア〜ト?」

店員さんが何か伝えたがっている。
飲み物は先に出すのか後に出すのかを聞いているらしい。

「先で」

インド料理的にはどっちが良いのか分からなかったが、
とりあえず先にしてもらった。

「フツウのナン、チーズナン、ガーリックナン…、おススメ」

カレーとともにナンを選んでほしいようだ。

「ノーマルなナンで」
普通のナンにした。
無難な選択だ。

店員はまだ何か喋っている。
簡単に言えば
「タンドリーチキンなどもグッドチョイス」
ということらしい。

せっかくのインド料理専門店なので、
タンドリーチキンのハーフサイズも頼むことにした。
本格的な物が出てきそうで何とも楽しみだ。
ただ、店の雰囲気に飲まれすでにお腹一杯でもある。


マサラティー
予定通りマサラティーが出てきた。

とってもスパイシーな香りでありながら、
まったくとげのないまろやかな香りだ。
さっぱりとしてとてもおいしい。

いままでマサラティーはインスタントの物はのんだことがある。
ここのマサラティーは今まで飲んだマサラティーとはだいぶ違った。
インスタントはスパイシーな「飲み物」であるが、
ここのマサラティーはスパイスの効いた「紅茶」だ。

しばらくするとタンドリーチキンが出てきた。
大きなさらに4つに分けられたチキンが乗り、サラダも添えられている。
さて、残念ながらインド料理のマナーが分からない。

手元のさらに取り分けて食べるのだろうか。
勝手に分けて良いのかな?
インドは手づかみで食べる文化だった気もするな。
でもナイフとフォークも出ているしフレンチ系のマナーで食べればいいのかな。
とりあえずは分けて食べるのが自然かな。

結局は取り皿に分けてみました。鳥だけに。

レモンを搾り、ライムソースをつけて食べる。
タンドリーチキン…。

日本は本格的に肉を食べるようになってまだ百何十年だろう。
所詮日本人は肉料理のなんたるかを知らない。
日本文化で鳥を料理しても、こういったつくりにはならないだろう。

日本人でタンドリーチキンと呼ばれるものを食べると、
タンドリーチキンのような味付けをした料理が出てくる。

このタンドリーチキンを食べると、
これは鶏肉をどのように調理すれば良いかを考えた末にできた料理であり、
それにタンドリーチキンという名が付いてるのだということが分かる。

添えられたサラダもスパイスがかかっていて鳥に良くあう。
双方がちょうどいいバランスを保ち、それぞれを生かしている。

しかし、それ以上にマサラティーが料理に合う。
初めに飲んでしまった分がもったいないと思えるほど料理に良く合う。
知らないとは恐ろしい。
なんで先に半分近く飲んでしまったのか。

タンドリーチキンを8割がた食べ終えたころ、
2種のカレーとナンが運ばれてきた。
カレーは普通の量だが、ナンが多い。
とても食べきれない気がする。

カレー2種類
カレーはスプーンでナンの乗せて食べればいいのだろう。
左手で口に運べばいいに違いない。

うーむ。
インドのカレーだけにとても辛いかと思ったが、
思いのほか辛くはない。
スパイシーではあるが、とてもマイルドだ。

そしてナン。
ふっくらとしていておいしい。
ぱりぱりしていたり硬かったりはしない。
あくまでもしっとりふんわりだ。

食べていてふと分かった。

日本のカレーは、カレーライスの場合が多い。
カレーライスという料理だ。
ご飯があって、そのお供にカレーがあるのではない。
カレーライスという料理だ。

インドのカレーは違う。

まずはナンがある。
ナンを食べる為にはどんなものがあれば良いか。
カレーがあればいい。
そういう関係だ。

カレーを食べるのではなく、
ナンを食べる為にカレーが必要なのだ。
いや、インドでナンを食べるときに一緒に食べる料理を、
日本ではカレーと呼ぶのだ。

インドのカレーに種類が多いのでは無く、
なんと一緒に食べる多種のインド料理を
日本人がカレーという枠で囲っただけなのだ。

それにしても、これまたマサラティーが死ぬほど良く合う。
どう考えても単独で飲むものではない。
一緒にしなければすごくもったいない。

そして、このナンは食べても食べても減らない。
だいぶ食べた気がするのにまだまだたくさんある。

ムシャムシャ。

店員さんは何度か水を入れに来てくれた。
他の客も居らずVIPな対応だ。


苦戦しながらもやっとこさカレーとナンを食べ終えた。
かなりお腹一杯だ。

お腹は一杯だが、デザートを食べてみたい。
インドではどういうデザートが出るのか知りたい。
メニューは回収されてしまった。
どうやっててに入れるか…。
などと思っていたら店員がきてデザートを置いていった。
食後のコーヒーももらえるようだ。
どうやらセットになっているようだ。

出てきたデザートはマンゴープリンだ。
店員がそういっていた。
でも彼女は聞き取れなかったらしい。

マンゴープリンはカレーのスパイス感をさっぱりと消してくれた。
甘すぎず、胃にももたれないデザートだった。

コーヒーは酸味のある、初めて飲むようなコーヒーであった。
なぜか納豆のにおいがした。
本当に納豆のにおいがした。
彼女も納豆のにおいがするといっていた。
気のせいではない、納豆のにおいのするコーヒーだった。


ふと気がつくと、店に入ってから1時間40分ほどたっている。
ナンを食べるのに思いのほか時間がかかったらしい。
ランチの予定だったがディナーになってしまった。

思いのほか値の張る昼ごはんになってしまったが、
それだけの価値はあるお店だった気がする。


さて、昼ごはんを食べ終わったが、
これから先何をするかは考えていない。
とりあえずミッドナイトタウンにもどることにした。
そこらの店をウインドウショッピングするだけでも楽しそうだ。


店を回ってみて思った。
置いてあるものが高い。

ぼったクリという意味ではない。
高級なものがたくさん置いてあるのだ。
安いものも置いてあるが、
高いものの割合がやたらと多い。

こういうところで生活をしていると金銭感覚が狂う。
そして、元の感覚にはもどれないのだ。
危険だ。

でも、こういうスーパーで日常的に買い物をしたい。
近所にこういうところ無いかしら。


ミッドナイトタウンのオブジェ
室内に噴水(?)のようなものを発見した。
噴水というか、何だろう。
水のオブジェというべきだろうか。
天井から張られた紐を水が伝って落ちてくるだけだが、
なんともいえない動きだ。

噴水(?)の動画
思わず動画を準備するくらいなんともいえない動きだ。

まあ、ここでこれを眺めていては田舎物と思われる。
次にいこう。


六本木ヒルズに来た。
はじめてきたが当然名前は知っている。
ビルであるようなことも知っていたが、
残念ながら興味が無いのだ。
後学のために見に来た。

うーむ。
高級なものを売っている店が多いことは分かった。
ただ、「土地が狭いから高く積み上げた」という感じがぬぐえない。

面積は広いが、空間が狭い。

売られているものも通販で買えそうな物ばかりだ。
これならば三浦大根の路地販売の方がいくらか新鮮だ。


さて、帰ろう。


帰りは東京メトロで中目黒へ行き、
東急東横線で横浜に向かい、
京浜急行で最寄り駅までだ。

と思ったが、上大岡で寄り道をすることにした。

上大岡で電車を降り、京急百貨店へ進む。

どこに向かっているのか分からないが、
この人はずんずん進んでいく。
エスカレータを上り9階に着いた。
この先はレストラン街だった気がする。
ナンがすばらしいボリュームであったため おなかは空いていない。

「この先はレストラン街では?」
「…家具を売ってる店はどこかなぁ」

なぜかヨドバシカメラをうろうろしてから下へ降りる。
だんだん階を下げながらもうろうろする。

なんだろう。


空席の無いドトールとスターバックスを通り過ぎてもうろうろする。

最終的にはどこぞかの喫茶店に入った。
いまだ降り続く雪が見える窓側の席だ。
時間を気にせず話をするには喫茶店が楽でよい。

今文章を書きながら思った。

話をする場所として10階のレストラン街に向かっていたのか…?

なんとなくそんな気がしてきた。
今気がつきました。ごめんなさい。


喫茶店とは不思議なところだ。
食事をしにくる人がいて、
話をする為に来る人もいる。
1人でいるのに長くいる人もいるし、
荷物を置いたまま10分以上もどってこない人もいる。

自分は何をしているのだろう。
相手「気晴らしになる」と言っている。
確かに気晴らしにはなる。
気晴らしにはなるが、今日合ってからもう12時間以上一緒に行動している。
気晴らしにしては長すぎる気もする。
なぜこんなに長くなってしまうのか。

なんとなく、携帯電話が普及した理由が分かった気がする。
携帯電話での話ならば、12時間続くことはあるまい。


そんなこんなで、21時過ぎに帰路に着いた。
また夜遅くなってしまった。

いつぞやの独り言に「ランチから始めればイインダ!」と書いたが、
朝の9時から始めて夜の21時過ぎになった。
夜遅く帰ることに代わりが無い。

根本的に何かを見直さなければいけない気がする。
どこを見直せばいいだろう。

まだまだ人間修行が足りないようだ。

■ 2008年2月10日 ■

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